櫻イミト

世にも怪奇な物語の櫻イミトのレビュー・感想・評価

世にも怪奇な物語(1967年製作の映画)
4.5
ポーの耽美ホラーをF・フェリーニ、ルイ・マル、R・バデム、各監督が豪華スターで描く40分×3話のオムニバス。

三者三様に、自分の中の執着により破滅する物語を描いている。名監督が耽美演出を競うかのように個性を発揮していて3話すべて見応えがあり面白い。

第1話 「黒馬の哭く館」ロジェ・ヴァディム監督
出演 ジェーン・フォンダ ピーター・フォンダ

フォンダ姉弟の共演。ジェーンは翌年の「バーバレラ」(1968)の助走となる奇抜でエロティックな衣装を披露。退廃的な貴族の暮らしと幻想表現はピーターが主役を演じる「イージー・ライダー」(1969)を予感させる。ヴァディム監督×ジェーンの夫妻タッグもプラスに働いている。ヴァディム監督が得意とする耽美表現は「血とバラ」(1961)と並ぶ出来映え。古城ロケーション、子供の豹・ふくろう・小猿・黒馬など動物の使い方、黒煙ごしの太陽、どれも決まっている。

第2話 「影を殺した男」ルイ・マル監督
出演 アラン・ドロン ブリジット・バルドー

幻想表現を用いず、スタイリッシュに耽美ホラーを表現している。前半の子供たちの演出の上手さはルイ・マル監督ならでは。中盤に若き日のバルドーを思わせる女優が全裸解剖実験の危機に合う。その後に登場するバルドーの目力。そして彼女を鞭打つアラン・ドロンの狂気。

第3話 「悪魔の首飾り」フェデリコ・フェリーニ監督
出演 テレンス・スタンプ

フェリーニ監督がお笑い抜きで耽美ホラーを演出していて非常に完成度が高い。短い尺も幸いしたか始終テンションが高く、テンポも映像も素晴らしい。テレンス・スタンプも実にハマっていて、個人的にはフェリーニ監督のベストかもしれない。劇中で企画される映画のコンセプトがふるっている。イエス・キリストが主役の西部劇で、プロデューサー曰く「ドライヤーとパゾリーニの間にある連鎖関係にジョン・フォードを少々加える」というもの。ホドロフスキー監督は本作を観て「エル・トポ」(1970)を企画したのか?(笑
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