櫻イミト

The Nude Vampire(英題)の櫻イミトのレビュー・感想・評価

The Nude Vampire(英題)(1970年製作の映画)
4.0
フランス吸血鬼映画のカルト監督ジャン・ローランの2作目で初期代表作。カステル双子姉妹マリーとカトリーヌ(当時20歳)が初登場。原題「La vampire nue(新・吸血鬼)」。

【物語】
奇妙な研究室。動物覆面と赤覆面の研究員たちが青覆面の女性から採血している。一方、オレンジ色のドレスを着た娘が屋敷を抜け出し夜道を徘徊、動物覆面の男たちが追っていた。通りがかったピエールは助けようとするが、娘は撃たれ屋敷に運ばれていく。そして何と彼の父親が屋敷に入っていくのを目撃した。あくる日、ピエールは父親が屋敷で開く秘密パーティーに押し掛ける。それは自殺カルトだった。参加者の女性が拳銃で自殺すると、昨夜撃たれたはずの娘が現れて血をすすりはじめた。父親に問い詰めると、娘は親友が遺した孤児で謎の血液病を患っており、謎のカルト集団から女神と信じられ付け回されているのだという。。。

最高に大好物な映像が満載の一本だった。古屋敷ロケーションに娘たちのカラフルな衣装と小物を配したポップ&ゴシック趣味。両者を様々な画角で捉えた魅力的なカットが続出し、そのテンションは最後まで途切れなかった。双子姉妹は父親の従者という脇役だが、ルックスとインパクトが大変に強く本作のアイコンとなっている。前年のデビュー作「The Rape of the Vampire」(1968)の学生映画のような仕上がりからは信じられないほど映像・内容ともに垢ぬけていた。

序盤の動物覆面はローラン監督が偏愛を表明する「ジュデックス」(1963)へのオマージュなのが明らか。映画全体のシュールで耽美的な味わいも同作と同様だが、カラーであることと猟奇性では本作が凌駕している。双子姉妹のビジュアルは「シャイニング」(1980)よりも10年早く映画史上画期的だったといえる。世界で活躍するヘビーメタル・アイドル、BABYMETALの始祖とも呼べるだろう。

ユーロ・トラッシュホラー界でローラン監督と並び称されるジェス・フランコ監督の定番“エロティック前衛パフォーマンス”が本作に登場した。同監督がこれをカラーで初めて描いたのが1年先駆の「濡れた恍惚」(1968)。古城や猟奇的な耽美趣味も共通しているので同作からの影響は受けていると思われる。ローラン監督に関しての日本語資料が僅かなのでフランコ監督との関係性は「ナチス・ゾンビ 吸血機甲師団」(1981)の一件しか知らない。この点は調査を続けたい。

シナリオはミステリー仕立てで、やや強引さはあるもののシュールの範疇に収まっている。ラストの展開は想像を超えるもので、定番の“ローラン・ビーチ”を現世と来世の彼岸として用いたのはとても効果的だった。切り立った崖下の海岸ロケーションは先日観たばかりの「インモラル物語」(1973)の第一話とよく似ていたが、共にフランス映画であり同じ場所なのだろうか?落としどころでの呪いとSFの融合は、寂寞とした海岸ロケーションも相まって「リング」(1998)の続編「らせん」(1998)を連想した。世紀末を予感させる好みのラストだった。

大きく言及はされていないが、後のサブカルチャーに(おそらく間接的に)多大な影響を与えた一本だと思う。特にビジュアル面は昨今の耽美系日本アニメの元祖と言える。現時点ではローラン監督作の個人的ベスト。
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