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スウィング・キッズのbutasuのネタバレレビュー・内容・結末

スウィング・キッズ(2018年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

前情報を入れずに観たので、後半のあまりにハードな展開に驚いた。とても悲しく胸を打つ辛すぎる映画だが、しかしそこには何か熱いものが残る、間違いない名作。

戦時中の捕虜がタップダンスをする、という始まり方から、なるほどこの手のほのぼのムービーかぁと軽い気持ちで観始めた自分が甘かった。中盤に登場する手足を欠損した男の存在で、一気に彼らが北朝鮮人であるという現実に引き戻される。そしてさんざん戦争の英雄である重要人物として語られてきた主人公の兄が、ようやく後半に登場する。兄弟の確執の話になるのかと思いきや、ここで話は思わぬ転換を見せるのだ。兄は巨体で怪力だが知的障害者であり、主人公は兄の命を盾に北朝鮮の幹部から脅されることになる。この兄弟の関係性がもう何とも言えず切ない。主人公が動物のマネをして兄を笑わせるシーンは、今思い出しても泣きそうになる。

終盤のショーのシーンは圧巻。言ってもそこそこのハッピーエンドにはおさめてくるだろうとまだ高を括っていたので、ウキウキしながら楽しむことが出来た。そしてその後の最悪の展開。チーム皆殺しなんて、誰が想像できただろう。あの個性豊かで楽しいチームが、あっさりと蜂の巣になって即死する。そして後世には「ダンサーを装ったテロリストが所長を狙った事件」と伝えられていることまで明かされる。なんてしんどい。なんて辛い。

あまりにやりきれない気持ちでいっぱいになったところに、あのラストシーン。主人公と黒人の米兵が熱く素晴らしいダンス対決をし、言葉はなくとも確かに心を通じ合わせ、それを楽しそうにチームメンバーが覗き見する。全員が幸せいっぱいの表情を見せるあのラストシーンは本当にズルい。泣くわ。

言ってしまえばかなり胸糞が悪い展開なのだが、鑑賞後の後味は決して悪くない、非常に胸を打つ作品。久しぶりに心底感動する映画に出会えた。
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