ザリくん

天気の子のザリくんのレビュー・感想・評価

天気の子(2019年製作の映画)
3.9
新海誠IMAX祭にて。

全然「大丈夫」じゃない狂ったセカイ。
女1人を選ぶ信念のために堂々と東京をぶっ壊す映画は帆高くんとシンゴジラ牧教授くらいだぞ!

昨今の大雨社会で「天気なんて狂ったままでいいんだ、僕たちは大丈夫」と言い切ってしまう少年の恐ろしさ、尊さ。
成人してから見たから正直感情移入は出来ないけど第2の主人公スガさんの存在もあり、悔しいがめちゃくちゃ良く出来てる映画。(上から)
3年前に、1回目に鑑賞した時は、登場人物のセリフからそのまま読み取ろうとしていたからよく分からなかった。描写を読んで(あと出来れば新海誠の原作を読まないと)考えないと一見ご都合主義に見えてしまうのが新海誠がシャマラン監督に例えられる所以か??

例え(自分が1回目見た時のように)意味不明のままでいても、帆高が陽菜を天の理から奪い返し落下するシーンはその開放された美しさだけで落涙モノ。IMAXの画質と音質で大脳辺縁系を殴られる。
グランドエスケープの三浦透子さんが(直近でドライブマイカー熱が再燃したせいか)素晴らしいく響いた。涙腺から水の魚が泳ぎ出しそう。
RADも出しゃばり過ぎないのが良かった。

前作「君の名は。」では都会の美しさと運命着けられた恋路だったのに対し、今作では都会の醜さと能動的な恋路を描いているのが面白い。こんな理不尽と差別蔓延る汚い東京も描いちゃうのか…
格差の象徴として(K&Aの)半地下、社会への暴力反骨の象徴としてマカロフ拳銃出しちゃうの、「パラサイト」や「JOKER」かよ…てなったけど両作品が公開される前じゃないっすか!そりゃ世間からちょっと引かれますわ。先見の明(?)
あんなに分かり易かった君の名はとはえらい違いだ。

スガさんの主人公っぷりが良かった。
家出少年に暴力を奮う理解のない大人はどのシーンも左頬をぶつ(進路を阻む有刺鉄線でさえ左頬に傷をつける)が、スガさんは帆高を庇うために右頬を打つ。
鯨(魚の王?)を止める役割を持った龍となるはずなのに、最後は魚を野に放つ選択をする。恣意的に指輪気にするシーンを差し込まれまくっているから(奥さんが元雨の巫女だったかもしれないが)愛する人と世界の選択をした経験がある・痛みを知る大人で、帆高を究極の選択に追い込みたくなかったのに結局は行かせる。もう主人公。空見すぎて窓開けて水ザパーは流石に狂ってて笑ってしまった。

「自惚れるな、世界は元々狂っている」と"ラノベ臭い"セカイに自虐ツッコミを入れるスガさん、「でも自分たちはこの世界を変えた」と自分の足で延々と線路を外れて走った家出少年。
閉じてないセカイ系でオカルトたっぷりで、現時点新海誠最高傑作。
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