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2分の1の魔法のdeenityのレビュー・感想・評価

2分の1の魔法(2020年製作の映画)
3.8
ピクサー作品ということで安定の面白さがあるのだろうと思いつつ、実際に高評価もされていた作品でしたが、何かピンと来ずに劇場には行かなかった作品。

まあピクサーの安定感は素晴らしいですね。かつて魔法が使えた世界が舞台であり、その魔法を使って今は亡き父親を1日だけ蘇らせようとするも失敗に終わり、下半身だけで復活させてしまう。残りの上半身を呼び戻すために、兄弟は冒険に出かけるというストーリー。
何というか少し子ども向けっぽい印象を持つ設定ではありましたが、大人でも十分に楽しめる作品だったと思います。

魔法が廃れてしまった原因が文明の進歩というのも面白いですね。科学の進化による弊害を思わせるかのような、かつてできていたことが楽なことばかりに目を向けて見失ってしまうというメッセージ性も感じました。

まさにそれにあたるのが兄弟の関係性かなと思います。
主人公のイアンは引っ込み思案で弱気な弟。その兄貴であるバーニーはクセ強なファンタジー思考な変わり者。でもそれに対して思うことがあってもぶつかり合うことすらできない。
人間関係ほど面倒くさく、築き上げるのに時間がかかるものはないわけですし、楽な道などないのはわかっていても、それができなくなっていたイアン。現代の人も本当の思いを曝け出してぶつかり合い、初めて関係が築き上げられるにも関わらず、SNSなどで顔も向き合わずに愚痴をボヤいたりする。
本作では展開的にスマホを置いて旅に出るわけですが、そういうことかなと受け取りました。

展開的にはかなりファンタジー要素は強く、『インディジョーンズ』的な仕掛けとかも面白かったですし、なんと言ってもラストの闘いは良かったです。そこまでの伏線を回収するかのような戦闘を見せ楽しめたのは素晴らしかったですね。
ただ、全体的にもう少し起伏のある展開が欲しかったようにも感じたので、ちょっと物足りなさもありました。

しかし、イアンの目標であった「父のようになる」という会ったこともないキャラクターをほとんど描くことなく間接的に見せてくれた辺りはかなり好印象でした。
とりあえずさすがのピクサー作品でした。あと吹き替えで楽しませてもらいましたが、さすがにちょっと春菜さんは棒読み過ぎでしたね笑
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