TartarsauceX

ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネスのTartarsauceXのレビュー・感想・評価

4.1
ありえたかもしれない人生と、そうあって欲しかったと、願わずにはいられない人生。

内的外的要因によって思い描いた人生とは別のものになることが人生の常。「ああ、こうだったらよかったのに」と思うときに「今、幸せか?」と問われたとしたら、嘘偽りなくYesと言えるだろうか。

サム・ライミ監督が撮る、初めてのホラー映画調のMCU。ホラー的モチーフが闊歩しグロテスク的表現が目を引く中でも、道徳観や倫理観を問うシーンが印象的だった。同監督作品群であるスパイダーマン3部作や、『オズ 始まりの戦い』でも描かれていた、人生を揺るがすような出来事を目の当たりにした時の苦悩や、苦々しい感情、それでも人としての善性が敵味方関わらず根付いていること、が、大流のような目紛しいストーリーの中に刻みこまれていたように思う。
マルチバースという、使えばある程度派手になり下手すれば他の要素を殺してしまいかねない劇薬💊を、こうして意味を持たせて描くことができるのか〜と観終えた後に納得。これからもマルチバースがどう描かれていくのか、用いられていくのか楽しみ。

そしてエピローグを締めくくる「今、幸せか」の問いへのウォンの答えに、東洋的思想への敬意と美しさを感じた。
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