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ヒトラーVS.ピカソ 奪われた名画のゆくえのordinalのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

大ドイツ美術展と退廃芸術展について、作品を選別する人(ゲッベルス、ツィーグラー)や両展における作品の主題や様式の傾向、両展間の移動もあったこと、ナチス党員が実は表現主義を好むことがあったなどの矛盾、後にグルリット家から見つかった大量の作品、画商ローゼンベール、贋作でナチスを騙したファン・メーヘレンの裁判など、ナチスが行った芸術統制とその後の作品や画商の動きなどを学ぶにはとても勉強になる。
ただ、タイトルにあるピカソ自体に多くの言及はなく、ナチス党員とピカソが言葉を交わした《ゲルニカ》のエピソードをもって、芸術はいつも社会を反映してきたというメッセージで締められている。

本作を観るまでは画家を諦めたヒトラーが執念深く手当たり次第に前衛美術を弾圧していたと思っていたが、質素な暮らしや母子を主題とした作品を積極的に大ドイツ展に入れたり出生率を上げるために裸婦像を認めるなどという細かい基準設定から、それだけ芸術が人々に及ぼす影響や社会変革に齎す力を恐れ重視していたのだということが分かった。
また、国内のボクサーの評価が高まるとそれを表現した作品が退廃芸術展から大ドイツ展移動されたり、ナチス党員の家に実はマックス・ベックマンの三連画が飾ってあったり、メーヘレンの贋作が上手すぎて裁判で証明するために再度描かされたり、退廃芸術展では作品を醜く見せるために額縁無しや斜めにして展示したりなど、間抜けな小細工のような事が多く行われていたことが個人的に新たな発見だった。
“退廃”芸術は、前衛的な画風の画家を神経症とした医師マックス・ノルダウにより付けられた名だということも知らなかった。
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