きゅうげん

クーリエ:最高機密の運び屋のきゅうげんのネタバレレビュー・内容・結末

4.3

このレビューはネタバレを含みます

2時間ずぅっと胃を掴まれてるような緊張が続く、スパイ・サスペンス映画の新たな傑作。キューバ危機の裏にあった、実際の事件だというから驚きです。
細やかだけどサラリとこなす諜報活動の一挙手一投足には悶絶するほど。事実は小説よりも奇なりですね。

カンバーバッチのオサレな英国紳士セールスマン感からガリッガリの収容者への変貌っぷりには、役者魂が溢れてて脱帽。(これホントにMCU作品と前後しながら撮ったんですよね?)
そしてもう一人の主人公であるペンコフスキー大佐。
出会いこそビジネスだけど、酒を介してすぐ意気投合する“オッサンの友情”感が最高です。大佐の強い理念と「僕らはたった二人だけど、そういうところから変わってゆくんじゃないかな」というセリフは、いつまでも心に残ります。
そして核戦争回避を伝える、絶望と希望の同居した尋問部屋での悲痛な別れ……。

脚本家によれば、本作制作の動機は2016年アメリカ大統領選挙のロシアゲートだとか。
昨今にわかに再び冷戦のような情勢になりつつありますが、この映画・この事件が訴えるものは当時も今も変わりません。
まぁ、レイチェル・ブロズナハンがわざわざ染髪したのには「60‘sのお洒落アメリカ女性=ブロンド巻き髪」という定型化や、フルシチョフ像が映画的に分かりやすく“暴走する絶対的権力者”イメージで描写されたことなどには、多少のバイアスを感じないではありませんが……。

ところで冒頭のゴルフシーン、なんと『007ゴールドフィンガー』のロケ地と同じゴルフ場だとか。こういう目配せも忘れない、英国人ユーモアが大好きなんですよ。