◆あらすじ◆
冷戦時代の1960年、ソ連の高官のオレグ・ペンコフスキーから機密情報を提供する連絡があった。CIAとMI6は運び屋として普通のセールスマンであるグレヴィル・ウィンに依頼する。グレヴィルはやむを得ず引き受ける。グレヴィルはペンコフスキーと接するうちに信頼関係を築き始める。
◆感想◆
冷戦時代に政治と全く無縁の普通のセールスマンが機密情報の運び屋として働いた姿を描いており、セールスマンだった男が次第にその行為の意味を理解し、自ら行動するようになる姿が印象的でした。
グレヴィル・ウィン(ベネディクト・カンバーバッチ)は普通のイギリス人セールスマンであり、スパイと疑われないという理由だけで情報の運び屋にスカウトされてしまいます。運び屋になって以来、グレヴィルが日常生活に厳しくなったり、身体を鍛え始めたりと「死ぬかもしれない」「死なないようにしよう」という感情が如実に行動に表れていて面白かった。また、奥さんがソ連への出張を浮気だと誤解する展開も良かったです。
一方、情報を流出させたソ連の高官のオレグ・ペンコフスキー(メラーブ・ニニッゼ)は核戦争を危惧して自国を裏切る決断をしており、その行動はまさしく勇気の塊だと思いました。高官として安定した生活を捨てて、世界を憂うるなんて勇者ぐらいしかできないと思います。そんな彼だからこそグレヴィルも信頼して運び屋を続けられたのだと思います。
ストーリー前半は明るめでスイスイ話が進んでいくので、さっくり観ることができました。しかし、後半になると次第に雲行きが危うくなり、グレヴィルやペンコフスキー、そしてキューバ危機も絡んで緊迫した展開が続くようになります。
終盤に至っては観ていてとても辛かったです。グレヴィルの姿がとてもリアル過ぎて心に突き刺さりました。それでも彼がペンコフスキーを信じる姿に熱いものを感じました。
とても良い作品でした。明暗のバランス、それぞれの思惑とそれを超える友情関係と素敵な作品でした。
鑑賞日:2024年1月22日
鑑賞方法:CS ムービープラス
(録画日:2023年3月25日)