トムヤムクン

アスのトムヤムクンのレビュー・感想・評価

アス(2019年製作の映画)
4.0
自分とそっくりの分身(ドッペルゲンガー)が現れて、オリジナルの自分とは無関係に行動しはじめ、次第に周囲の人間も分身のほうを認知しだして、やがてはオリジナルを差し置いて「自分」になり変わってしまうという怪異譚は色々ありますね。その場合は登場する分身はオリジナルよりも優れていて、オリジナルが叶えられずにいた願望をあっさり叶えてしまう敵役だったりもするのですが、今作で登場する分身は色んな意味で「悪い」分身でした。分身が現れる原因は例えば主人公の満たされない欲求や劣等感だったりの個人の心理的な要因に記されている印象ですが、この映画では分身の存在が、若干テクノロジー陰謀論めいた理由付けをされた上で格差社会の隠喩として提示されているのが面白い。「悪いほう」の一家が出てきてリビングで対面した辺りまでは、「この後は悪いほうの家族がオリジナルの家族を監禁してからサンタクルーズのビーチでバカンスを満喫するのかしらん?」と思ってたら、一家族のとっかえにとどまらずに革命を志向しているあたりスケール感が全然違いましたね。
トムヤムクン

トムヤムクン