賽の河原

宮本から君への賽の河原のレビュー・感想・評価

宮本から君へ(2019年製作の映画)
4.3
「今日クリボッチ会やるんですよ」なんて話を聞いて「会を開いちゃうところが四流なんだよなぁ。孤独を打ちに行かないと。」と思いまして、打ってきました。
結論から言うと最高でした。
真利子哲也監督、前作の『ディストラクションベイビーズ』も中途半端にしか見てないので、初めてと言っても過言ではないんですが、本当に素晴らしい作品ですよね。
もう私、不覚にも終盤に涙してしまいましたけど今年1年振り返ってみても、これほどまでに「愛」を描いた映画ってあるかなと。剥き出しであまりに高純度ゆえに醜さすら感じさせる「愛」に1億点出ましたね。
午前0時に云々って映画だって、広い意味では愛を描いた映画ですけど、これほどまでに違うかと。映画ってすげーよね。
とにかく濃いこってりしたハイテンションさがある映画なんですけど、それを「ただうるさいアタマおかしい人たちの物語」にさせない池松壮亮さんと蒼井優さんの圧巻の演技ですよね。
特に蒼井優さんの熱演ぶりは本当に凄まじい領域に来てましたね。
この映画、ピエール瀧さんが出演してるということで助成金絡みで騒動になってるみたいですけど、おじさんチームの演技も素晴らしくてね。見た目ゴツいんだけどデフォルメされたコメディのテイストが抜群ですよ。
出色なのは佐藤二朗さんですよね。私は常々、この人が映画に出てくると、映画が映画的でなくなる演技しかしない人だと思ってましたけど、シンプルに福田雄一監督の演出が最低なんだということがハッキリして清々しいです。
漫画原作があるのは不勉強にして全く知らなかったですけど、序盤から時系列をシャッフルした作りになっててね。
私はこの時系列がそれなりに関心のフックになる感じでいいと思いましたよ。
もう池松さんと蒼井優さんのセックスシーンに至るまでの電撃的な飛躍力も最高ですし、そこで濃密に性を描いている分、その真逆のことが起こるシーンの恐ろしく禍々しいコントラスト。
バチバチの暴力表現、すごく追い込みとしていいと思いますしもう階段のシーンは快哉を叫びたくなる最高シーンでね。
ポスターに「負けてたまるか」とありますけど、普通、人間って生きてりゃ負けしかしないんですよね。負けの連続です。そういう風に思わない人は色んな意味で幸せそうで羨ましいです。
負け続けるマンが普通の世の中で、負けずに足掻く宮本の姿が本当に最高でしたね。
賽の河原

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