父母ともに癌

実録 私設銀座警察の父母ともに癌のレビュー・感想・評価

実録 私設銀座警察(1973年製作の映画)
4.2
太平洋戦争後の東京、復員兵たちが私設警察と名乗って愚連隊化し、抗争を繰り広げる話。

オープニングまでの展開が凄い。
渡瀬恒彦演じる復員兵が帰還、自宅に戻ると妻が占領軍の黒人とセックスをしていて、しかも黒人との間に子を成しているので、その子供を思い切り家の外に投擲し妻を殴り殺すという。
映画史上に残る悲しいオープニングじゃないだろうか。

戦争直後の東京で復員兵が愚連隊化していくんだけど、そのきっかけも外国人の家をみんなで爆破して仲良くなる、という禄でもないものだし、警察と名乗ってやっていることも禄でもない。
禄でもないなりに出世して抗争していく前半面白い。

ただ、後半、仲間割れ展開になってからは妙に重たい雰囲気になってくる。
これは渡瀬恒彦の演技が素晴らしいのと、個人的には室田日出男が(いい演技してる)死んで退場したからだと思うんだけれど、とにかく重たい。
渡瀬恒彦はもう殆ど殺人ゾンビみたいな使われ方をしている。土から這い出るし、すごい殺す。

ラストはカオスな展開になり梅宮辰夫が大爆発して終わっていくんだけど、ここも確かに滑稽味はあるんだけれど地獄感が凄くて震える。札ビラが舞う中でみんな笑顔で乱交パーティ。最高で最低で最悪。映像も妙にサイケデリックでクラクラする。
そしてラストは渡瀬恒彦が一人大量喀血して死んでいくんだけど、もうこの寂しさたるや。

展開が面白い映画だと思う。
くそ重たいんだけど、仁義の墓場みたいに絶望絶望って感じじゃなくって、常に滑稽味をたたえているので、ラストのカオスを受け入れられるし、また一人血を吐き死んでいく男にも寂しくなれる。
見終わった後にすごくおなかいっぱいになっている。

梅宮辰夫の演技はベストなんじゃないだろうか。こういう演技、上手いっていうか、素やろ、と思う。多分普段あんな感じなんですよ、梅宮辰夫。
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