構想12年という市井昌秀監督のオリジナル作品。
新井浩文さんの逮捕により公開も危ぶまれていたが、なんとか無事公開となった。しかし3週間限定なので、観たい方はお早めに。
両親が銀行強盗を行い行方不明に。その後疎遠になっていた兄弟は、行方不明&時効成立をもって遺産相続のために集まることになり…
監督のここ最近の作品はジャニーズ主演の原作モノが多かったが、どうも監督の持ち味と食い合わせが悪いような印象を受けたが、本作はオリジナルという事もあり、やりたい事が発揮されつつ形になっている作品だと感じた。
遺産相続という事で、それぞれ下衆い本性をさらけ出す兄弟達。4兄弟を草なぎ剛、新井浩文、MEGUMI、中村倫也が演じているが、特に草なぎ剛演じる長男は沼のように果てしなく下衆い。そこに闖入者が次々と現れて場はますます混乱していくが、伏線が張り巡らされており、何気ないフラグがどんどん回収されていく。物語はドタバタ喜劇からヒューマンドラマへと展開して行く。ラストの展開はある種のファンタジーではあるが、後味は台風が過ぎ去った時のように晴れやかだ。
基本家の中だけのワンシチュエーションブラックコメディだが、工夫は凝らしているので飽きさせない。監督特有の異常な長回しも、芸達者な出演陣のおかげで本作ではあまり違和感がない。ところどころ脚本に??と思うところがないわけではないが、ここ最近の作品と相性が合わなかったので、久々にやりたい事やれてるなという印象だった。
大人ばかりの中で映画初出演という長男の娘の甲田さんが良いスパイスになっている。
尾野真千子さんの奥さんは旦那を愛しすぎてある意味サイコパスで怖いと思った。
しかし…やっぱり新井さん、いい味出してるよなぁ……