ENDO

ヨーゼフ・ボイスは挑発するのENDOのレビュー・感想・評価

4.2
冷静だが熱い男だ。どう考えてもお金を稼ぐことに心血を注いでいる間に一生を終えてしまう私達は、どんなに文明が進んでも搾取され続けていく運命なのか?そんなシニシズムなんてクソ喰らえ!風穴を開けようと奮闘する一人の男。墜落して一度は死んだ我が身。本当の意味での資本主義以外の仕組みを作ることが可能であるという啓蒙。笑い者にされ、空疎なレトリックと反論されようと思考停止するな!と呼びかける。そのツールとして芸術は重要である。もちろん形骸化したアカデミックな意味ではない誰もが発想を自由にする力としてのものだ。マーク・フィッシャー『資本主義リアリズム』とも通底するこのシステムの行き詰まりと人間への希望。少なくとも狂わないためにも行動を。挫折しようとも止まらない姿に涙。リアリストである事を肯定した時点で理想は不可能性を帯びる。そんな空気が遍在化してる日本及び世界。
経済活動が(仮に無理強いされたとはいえ)文明を支えてきたとしたらそれを転覆するのは生易しいものではない。その不可能性を回避する手段として想像を具現化する芸術が生まれたとしたら。人類は弁証法的にさらに進化できるのかなぁ。
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