セガール幹事長代理

ボーダー 二つの世界のセガール幹事長代理のレビュー・感想・評価

ボーダー 二つの世界(2018年製作の映画)
3.0
自分と同じ種類っぽい男を見つけた女が自問自答する話。

作中の表現方法こそ過激だが、出自、文化、そして(流行りの、というと語弊があるが)セクシャルの境界線に苦悩する人々と、生物が持ち合わせる差異を「排除」するか「共存」するかみたいな、王道のテーマを描いており、またそういう話か、と若干聞き飽きた感も否めない。
しかし本筋が面白いので最後までダレずに鑑賞できる。

ぱっと思い出したのが、以前何かで書いたかも知れないが、私の行きつけのゲイバーのママが放った「ゲイへの差別が無くなったらこの商売は成り立たなくなるわ」というぼやきや、「人に優越感を与えるのが私の仕事」という欠損カフェで働く女性の一言である。
こういうこと書くと「マイノリティーを武器に生計を立ててる人を引き合いに出すな」「ゲイが全員ゲイバーで働いてると思ってるのか」って怒られるんだけど、そういうこと言われると「理想論では世の中成り立たないよね」っていう毒にも薬にもならないまとめ方しか出来なくなるのが歯がゆいところである。

観終わった後に誰かと感想を話し合いたくなるようなテーマなんだけど、土曜の夜に家族でポップコーンつまみながら観るものでもないのも泣き所か。

全然関係ないんだけど、中国地方に吉川元春(きっかわもとはる)っていう武将がいて、その奥さんが凄い不細工で、元春の結婚した理由が「全然結婚できない醜い娘を持つ家臣がいて、その家臣の顔を立てる為にワシが結婚した。結果的に家臣は自分に忠誠を誓うようになった」っていう話があって(諸説あり)、私は物語として面白いから好きなんだけど、美人不美人の概念がない、差異を排除した世界ではそういったエピソードも生まれないのかと思うと、やはり何とも言えない寂しさを感じてしまうものである。

ぼかしに寛容な人におすすめ。