たつなみ

よこがおのたつなみのレビュー・感想・評価

よこがお(2019年製作の映画)
4.5
とてつもなく恐ろしいホラー映画を観た。
全編常に重苦しい空気が漂い、徐々に地獄に引き摺り込まれてゆく様な緊張感で息苦しさすら感じた。
二度と観たくないけど映画としてはとてつもない傑作だと思う。

現在と過去がシームレスで行き交う編集は巧みで、正に謎が謎を呼ぶ展開。
物語にグイグイ引き込まれてゆく。
そして、映像や音で状況を語る映画的な演出もとても気が利いていて心地良い。
筒井真理子の一人勝ちと言える位の大きな存在感と、脇を固める市川実日子、池松壮亮の演技もお見事。
もはや高得点を付ける他ない!

映画として誇張されている部分はあるのだろうが、私たちが暮らす現代社会には、『善良』であることが僅かなキッカケで『罪』になってしまう危うさがある。
相手に対する憐みや、優しさというものが、時に相手を傷付ける刃になったり、相手に利用される弱みになったりする。
普段の何気ない人とのコミュニケーションが、実はとても不安定なものである事を思い知らされる。
そう考えると、主人公市子の仕事が”介護士“である所にも意味があるのだろう。

自宅で本作を観て『地獄めぐり』が出来るという、コロナ禍の今にピッタリな作品。