天豆てんまめ

フォードvsフェラーリの天豆てんまめのレビュー・感想・評価

フォードvsフェラーリ(2019年製作の映画)
4.5
初めてのSCREEN X。没入感と疾走感が半端なく凄かった‼️クリスチャン・ベイル扮するマイルズの命を賭けたレースを彼の目線、時に助手席に座っている感覚で体感し、クラッシュして飛んできた車の破片も3Dでは無いのに避けた。ぎりぎりのブレーキングやカービングの緊張感もたまらなく、時に俯瞰で長い道を端から端まで高速走行する気持ちよさ、、、この映画ほどSCREEN X良さを体感できる映画なかなかないのではないか。

席位置のおススメは通常SCREEN Xは全体を捉えるよう後列が良さそうだがこの映画の場合、目線中央のI列(劇場により目線中央位置は違うが)真ん中より一つ前のH列中央で観て良かった!実際270°の右左はKかL列位まであり全貌を観るにはチラッと横を観る必要があるがこの映画で優先すべきは圧倒的な没入感と同化感でやや前がおススメだ。横は左右に広がる道の延長という場合が多い点でもそう思う。

しかし映像面の迫力が半端ないこと以上に心理面での没入感がたまらない。彼のヒリヒリするような緊張感と恐怖感と高揚感が直に伝わってきて私はレースシーン中に何度か涙した。これはクリスチャン・ベイルの全身から醸すレーサーとしての本物感が凄まじいことに尽きる。口が悪く礼儀知らずで型破りな職人メカニック的レーサーの彼を気に入らないフォード重役が課した理不尽すぎる高いハードルとプレッシャーの重みを背負い、生死ぎりぎり攻めるその度胸ったら。

そんな彼と共闘する元ル・マンのレーサーでありながら今は心臓の薬を飲み、チームリーダーとしてフォード社長や重役ど難題満載の調整をし、一世一代のチャンスに賭けるマット・デイモン扮するシェルビー。マット・デイモンの苦悩しながらフォード重役や社長をねじ伏せるシーンは痛快だ(特にシェルビーがフォード社長にするギリギリ過ぎる勝負はたまらない)。

フェラーリとフォードの企業やトップ同士の火花散るバトルや、販売率やマーケティング重視にならざるを得ない企業ドラマとしての現実と葛藤もリアルで面白い。

またマイルズと息子との絆の深さにも揺さぶられ、なんといっても彼の妻のモリーのマイルズ顔負けの激しさ、気丈さ、美しさを併せ持った存在感が素晴らしかった。

その上でマイルズとシェルビーの無謀と思える共闘と友情がど真ん中にある。昨年泣いた「グリーンブック」とはまた違う、レース映画という範疇に収まらない最高に熱くなれるバディムービーとして腹の底から震えるような興奮を味わった。

アカデミー賞受賞式でクリスチャンベイルとマットデイモンが揃い踏みするのも今から楽しみだ。彼らが体現したマイルズとシェルビーは私にとって忘れられないヒーロー像となった。

もう一度、諦めていた何かに挑戦しよう、そんな気持ちを湧き上がらせてくれる映画だ。彼らの勝負を観ていたら日頃の悩みがバカらしくなる。人生は一度きり。悔いないように自分だけの勝負に出よう!