ひろ

ナショナル・シアター・ライヴ 2019 リア王のひろのレビュー・感想・評価

4.2
自分は舞台には詳しくないが、『ロード・オブ・ザ・リング』のガンダルフや『X-MEN』のマグニートーでお馴染みのイアン・マッケランが主演ということを知り、興味本位で鑑賞。
事前に解説のようなインタビューがあったため、物語の内容が入ってきやすかったし、各々の言動の理由について推測する助けになったが、非常に重厚な作品だったため、かなり疲れた。
だが、その分だけ鑑賞後の満足感もひとしおだった。

普段こういった舞台を観る機会がないため演技、セリフ、そしてシーンの切り替えのスムーズさなど全てが新鮮で、あらゆるものに感動した。


まず出演者全員のレベルが総じて高い。
圧巻の演技に思わず引き込まれた。
そしてやはり主演のイアン・マッケランの渾身の演技が素晴らしかった。
非常に難しい役だったと思うが、魂を削って見事に演じ切っており、カーテンコールの際もまだ役に没入しているような表情をしていたように見受けられた。


また、この作品を素晴らしいものに仕上げたのは役者だけでなく、セリフとシナリオによる功績も大きいだろう。

セリフに関しては、言葉を紡ぐとはかくも美しいのかと感嘆させられるほど見事で、演技と字幕どちらからも目が離せなくなるほどだった。

シナリオに関しては裏切り、天の定め、家族の崩壊、因果応報などシェイクスピアらしい要素が全て盛り込まれ、壮大なものとなっていた。
原作は未読だが、これを機に読んでみたいと思ったし、読むことで認知症のリア王や女性としてのケントという設定にチャレンジしたことの意義を理解したい。


叶うことなら生でこの舞台を体感したかったと、そう思わされた。


P.S.
近代的な描写もあれば中世的な描写もあり困惑させられた。
単に自分が演出の意図を汲み取れなかっただけなのか、或いはリア王の困惑を違う形で観客にも体感させようとした結果だったのか…

なお、シェイクスピアはこの作品で何かを風刺したのだろうか?
権力にしがみつくだけの王と、おべっかを使い嘘と裏切りと肉欲にまみれた取り巻きを批判したかったのだろうか?
或いは最後に変わることのできた人々を、人間の良い面を称えたかったのだろうか?
ひろ

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