【第69回ベルリン映画祭 監督賞】
ドイツの異才、アンゲラ・シャーネレク作品。世界的に評価の高い作家ながら日本でまともに紹介されたことがない。
予想以上の難解作で、セリフは極限まで少なくされているがそれでも理解が及ばない部分は多かった。実際ベルリン映画祭でのプレミアでも拍手とブーイングが同時に起こったという。
タイトルは小津安二郎『生れてはみたけれど』のオマージュ、ストーリーはロベール・ブレッソン『バルタザールどこへ行く』が基にあり、セリフは『ハムレット』からの引用が多い。
正直話はよくわからないのだが、円環構造というか、モザイク状になっており複雑。たぶんネイティブでもよく分からないんじゃないかな。
絶対的な孤独とどこへもぶつけようのない自分への怒りが込められた作品のように思えた。
シネフィル的な引用ばかりで作家性がない、つまらないかというとそんなことはなく、非常に美しいフィックスの撮影で飽きない。人が寝転ぶ、倒れているショットが多いのは『ハムレット』のオフィーリアのイメージか。
完全に理解できたわけではないが、魅力あるショットの連なりが心地よい。