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在りし日の歌のmasayaのレビュー・感想・評価

在りし日の歌(2019年製作の映画)
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改革開放期中国の三十年。激しく寄せて返す激流のように、一貫しない政策は一人一人の人生を翻弄する。身を寄せ合って生きていた親友同士の2つの家族を引き裂いて、嘆きと悔い、再生に費やされる長い長い時間の流れ。派手さはなくとも、大河を思わせる悠遠な作品だった。

一人っ子政策、現在はどういう落とし所になってるか知らないのだけど遵守させようと監視や告発が相次いだ訳で、その結果この映画のような悲劇も多く見られただろう。そこには傷つけられた人、他人を傷つけて癒えない後悔を強いられた人がいる。狂わせるべくして、人生を狂わせた政治がそこにあった。

外国文化の制限にしてもその時々で二転三転しているし、計画経済を適当に放り出して大混乱を導いてるし当時の政策は散々なのだけど、一応現政権と陸続きの政府に対してこの映画の批評性がかなり高くて驚く。

中国でもモンゴルに近い地方都市で暮らしてきた主人公夫婦、食卓にはどんな時でも郷土食の白くて大きな蒸しパン、マントウ(饅頭)が出てくる。楽しい時も悲しい時も、故郷から離れても戻っても繰り返される食事に、いつでも誇らしげに湯気を上げるマントウの絶対的揺るぎなさに何故か涙が出る。
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