イスケ

屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカのイスケのネタバレレビュー・内容・結末

3.7

このレビューはネタバレを含みます

「女の脇の下でヤッた。肘や膝の裏も使ったぞ。」「穴がないのか?」

淡々としたやりとりで、何を言うとんねんw
フリッツの弟の永久に続く誘い笑いも笑えたし、ギリギリでコメディに片足突っ込んでるやろ。


直感的な感想としては、底辺オブ底辺があまりに異世界すぎて惹かれるものがあった。鑑賞したのは一日前なのにまだ味が残ってるのよ。

クズを描いた映画はクズがクズであるほど魅力が増すもので、本作でも同情の余地のないフリッツ・ホンカという人物とゴールデングローブという掃き溜めのような場所が、映画的魅力を増幅させていた。悪臭が伝わってくるようなフリッツ・ホンカの自宅も良い。

執拗な殺害シーンにも見入った。
テーブルに何度も何度も娼婦の頭を叩きつけるのもなかなかの所業だったが、やはりクライマックスは首絞めバトルでしょう。かなりの長尺にも関わらず、不思議ともっと見ていたくなった。(おかしなことを言ってる自覚はある)


フリッツ・ホンカの根底には強い女性蔑視があることは明らか。

彼は「殺したい」という願望が先に存在するのではなく、自分より弱い立場の女性を虐待することで快楽を得て、その延長線で「殺してしまうこともある」という感じに見えた。

野球で言えば「ヒットの延長がホームラン」にも似たところがあり、そこはこれまで映画やニュースで見てきたシリアルキラーと種類が異なるように感じた。

同情できるところもなければ、天才的犯罪者でもない。(しいて言えば、一度酒を絶って真人間になろうとした点は惜しかった)
ただただ卑劣で汚い人間として描かれている点も、従来のシリアルキラー作品とは異なる立ち位置を示しているよね。


個人的に一定の魅力を感じた一方で、人間心理の掘り下げがほとんど為されていない点は致命的だったのではという思いも共存している。

単純なエンタメなら必ずしもそんなものを求めないんだよ。ただ、本作で扱っているのがシリアルキラーだからね。
表面の出来事を魅力的な構図やビジュアルで描いていくだけでは、作品としては足りていない気がするのです。


劇中のフリッツ・ホンカというキャラクターはよく作られていて素晴らしかった。

「ホンカを演じてる役者さんって本当はどんな顔してるんだろう」と思って調べてみたら、若いイケメンの青年なんだよね!(たぶん同じようにググってる人多いと思うw)

フリッツ・ホンカを演じたヨナス・ダスラーという役者さんの喋り方・歩き方・背筋の曲がり方と、特徴的な鼻や髪や斜視などを作り上げたメイクアップの融合で、人間でありながらモンスターのようなキャラクターを作り上げたのが凄い。


何故か汚ったないゴールデングローブには行ってみたい。
イスケ

イスケ