骨川スジ夫

屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカの骨川スジ夫のレビュー・感想・評価

2.9
1970年代に実在した連続殺人犯が主人公。
実話の事件をスリリングに見せていく映画かと思いきや、さに非ず。
主人公フリッツやバー『ゴールデングローブ』に集う人々の心の闇を見せ続けられる。
観た後は、どんよりとした気分と得体の知れない虚無感が残った。

映画を観た後でここまで暗い気持ちになるのは、「ジョーカー」以来。
しかし、「ジョーカー」にはある種の救いがあった。抑圧してきた存在をことごとく破壊していく爽快感があったからだろう。

本作にはそれがない。
ただひたすらに満たされず、酒や肉体関係に溺れて現実をやり過ごそうとする中〜老年の男女ばかりが登場する。
彼らには戦争の影が付きまとっている。
ジュークボックスから流れる曲の歌詞に、
在りし日の幸福な日々を、失った愛しい人達の記憶を思い起こして涙する老人達のシーンが印象に残る。

そんな老人達よりも下の世代のフリッツはといえば、恵まれない容姿で女性にモテず、
精神もアル中で捩じくれてしまっている。
殺人を繰り返すなか、一度は酒を断とうするが、やっぱりやめられない。
救いようもないし、どうしようもない。

こんな内容なのに、BGMで流れてくるのはとても明るいポップな曲ばかりなのが、逆に陰鬱さを強調する。

この映画、観る人を選ぶのは間違いないと思う。
骨川スジ夫

骨川スジ夫