「あなたが正しく使ってね」というある人物から発せられる一言でこの映画のすべてを肯定してしまいたくなった。
それまでどんなに愛された人でさえ、たった一度の失敗を責められ、貶められてそれまでの功績すら無きものにされてしまったり、ましてその人が産み出したものさえ存在を奪われたりする様なことが平気で起こってしまう世の中だ。クラウド上で聴くことすら許されないあの曲たちは果たしていつ帰ってくるのだろう。
そんなことを想像してしまうような題材を、世界的に愛されたビートルズでやってしまうダニーボイルの多少の意地の悪さと、それでも溢れる愛に図らずもタランティーノの新作との同時代性を感じずには居られなかった。その割に今作があんまり話題になっていないような気がするのは少し解せなくもある。
ラストに主人公がとる行動にはとても頷けるのだけど、それこそ心の底から浮かび上がる自分の想いこそ、自分自身の歌にしてステージで放った方がもっともっとグッときたなあとは個人的に思う。それだけの説得力のあるオリジナル曲を作るのは、ビートルズの曲を前にしてかなりハードルの高いことなのはもちろん承知の上なので、それは勝手な自分の願いに留めておこう。
久しぶりにこんな清々しいデートムービーに出逢った気がする。世界中の恋人たちが劇場でこの映画を観ることを願う。
