マカ坊

カニバ/パリ人肉事件 38 年目の真実のマカ坊のレビュー・感想・評価

-
輪郭を捉えることさえ不自由な程の過剰なクローズアップ。
括弧付きの「狂気」の一端を遠巻きから覗き見しようと訪れた観客達は、不覚悟なまま早々にその「狂気」との距離を詰められる。

はっきりと不快だ。


人を殺して食った人間のその後を追ったドキュメンタリー映画を、一観客として無批判に消費しているという事実自体が非常にカニバリズム的であるとは言え、やはり個人的な倫理の壁を取り払ってこの作品に対峙することはできなかった。

佐川氏本人の言動や健康状態にも少なからず驚いたが、何より彼の実弟の衝撃的な行動には思わずハッとした。行為それ自体にはもちろんだか、彼がその行為を行なっているという事実がどこか自分の中で腑に落ちてしまったことに。

欲望のコントロール。
難しい。
この映画を見ながら、法や国家の意義を考える人もいるだろう、ヤバイ奴のヤバイ話として飲み屋で気軽に語る人もいるのではないか。
そんな彼らも私も佐川兄弟も皆、欲望という名のナイフで切り分けられた各々の「生」とやらを貪りながら、押し寄せる心の飢餓を乗り越えて行くしかないのかもしれない。
マカ坊

マカ坊