ピュンピュン丸

男はつらいよ 寅次郎恋やつれのピュンピュン丸のレビュー・感想・評価

4.5
寅さん13作め。歌子さん再び。今回の寅さんは恋敵ではなく、深い絆の前に敗退し、結果的にその修復に一役買う。

吉永小百合が、前回にも増して美しい。前半はヤツレ具合が大人の女性としての美を、後半になって、歌子が元気になるつれ、吉永小百合本来の快活な美しさが表に出てくる。吉永小百合の撮り方が本当に丁寧で、芸が細かい。背景に添えられる花や花火、寅さんとのツーショットなど、どれもが溜め息がでるほど絵になっている。勝手な解釈かもしれないが、自分には、この歌子さんのときの寅さん、いや、渥美清の笑顔だけが本当の笑顔のように思えて仕方ない。

歌子さんのときは、なぜかマドンナの心の悩みが直接的にストーリーのなかで表現されていて、そして、またこのときだけ、寅さんでなく、妹のさくらと夫のヒロシが重要な役割を担う。脚本の作り込みが他の寅さんとは違うんだよなあ。考えすぎかな⁉️

とらやの2階に、さびしそうにポツンとおかれた、寅さんの大きな、くたびれたトランク。それが映し出されたとき、自分はジワッと何かがこみ上げてきたよ。

まだ全部見たわけでない私の率直な感想。寅さんは五作めまででほぼ完成。それ以降は、ありがちな自己模倣のマンネリズムに陥るが、ただ、マドンナに吉永小百合を迎えた歌子さんのエピソードだけは、また違った意味で秀逸である。ちょっと乱暴で、すいません。