アガサ・クリスティのポアロシリーズの「ナイルに死す」の映画化。
もともとクリスティ作品のファンなので、この作品(原作)はよーーーく知っているのだけれど、原作のシリーズ中ではポアロの出自や過去に関してはほぼ語られない。
それに対して、この映画では冒頭で彼の過去とでもいうべき場面(映画オリジナルフィクション)が語られ、髭の秘密とか、どこかに悲しみを抱えているような、ちょっとばかりエモーショナルな人物になってます。
本来原作で語られるのは滑稽なほどプライドが高く、頭の良さを自覚していて会話から論理的に推理を導き出す、時に冷徹なほど客観的かつ冷静で全てを疑ってかかるような捜査方法をとることくらい。
ただその分、年代を追って読んでいくと、だんだん年老いて現実とのギャップが出てくる悲哀みたいなものを感じる流れになっていて、長年それが染み付いているので、今作のポアロはやけにエモーショナルなポアロだなあ、と、どこか「似て非なる人物」を観ているような気分になってしまう。
私にとっては、「全く別の新しい物語」と受け取る方が受け入れやすかったです。
他にもエレキギター出てきたりとか、ちょっとしたところで随分「刷新」「現代化」しちゃった感じもあって、そこも違和感を感じるところかも。
私の頭の中のポアロ世界にも、これまでのドラマ化の中にも、そんなん存在してたことがないんで、あれこれいつの時代の話だっけか、と一瞬混乱したよ。笑
とはいえ、本来の要である秀逸で面白いトリックはそのままなので、ストーリーは面白いし、一人一人の登場人物についても性格描写が細かいぶん、推理劇としてとても楽しめます。
むしろ原作知らずに「おお!!」っていう方が圧倒的に楽しいでしょうね。笑
原作知らない、或いはどんなだっけ、と忘れてる人は、ぜひ予習とかしないで観てみてください。