えむ

金の国 水の国のえむのレビュー・感想・評価

金の国 水の国(2023年製作の映画)
3.9
映画館で予告を観た時にとても優しい空気が流れていて、機会があったら観てみようと思っていました。

断絶する2国、お互いに自国に欲しいものを持っていて、2つの国の長は時に調停代わりの約束事を持ちつつの、常にいがみ合っては戦って、その国境には大きな壁ができている。

その約束事というのが、お互いの国の「いちばん賢い青年を」あるいは「いちばん美しい娘を」自国に婿入り、嫁入りさせること。

いがみ合う2国は、その約束を「形ばかり」守るために、犬を、猫を差し出すのだけれど、その相手同士がひょんなことから出会って絆を結び、やがてそれが国の平和への道へ進み出すことになる、そんなお話。

2国の設定はいうまでもなく、現代の様々な国同士、組織同士のいがみ合いや戦争に通じるし、出てくるキャラクターも、その影にいるであろう人たちを彷彿とさせて、場所を変え、国を変えても普遍的な構図になっている。

それを変えていく、救っていくのは、決して中心にいる者でなく、末端に追いやられた「普通の感覚の持ち主」であり、その武器となっていくのも「人への思いやりや優しさ」「正直さ」「現状を正しく見抜く賢さ」のようなもの。

メッセージ性はありながら、全般に流れる空気はとても優しく温かいもので、変なエキセントリックさもクセもなく、どんな人が観ても、すんなり受け入れられるようになっている。
ジブリなんかもそうだよね。
いやむしろあっちの方がずっとクセはあるか。笑

ちょっと慌ただしく、眉間に皺を寄せてTo-Doリストと戦ってる最中だったので、ホッとしたくてチョイスしたのだけど、観た後にふんわりと優しい気持ちになれる良作でした。

いがみあう2国、という設定はあれど、若い志ある世代が未来を変えていくことだったり、人を束ねるに必要な度量であったりも描かれるし、他にも登場人物たちから、見た目からは分からないその人の才能や良さがあったり、ささやかな幸せを大事にしていたり、温かい眼差しで人を見ていたり、と「人間がもつ本来の力や才能」みたいなものがふんだんに散りばめられていると思います。

あと観終わって感じるのは、「本当に才能あるひと」って、意外と地味で目立たなかったり、末端に居るものだよね、ってこと。

以前からそれは感じてたけど、そういう「その人の本来の良さ」みたいなことに気づける人でありたいですね。
えむ

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