しゅう

ニノチカのしゅうのレビュー・感想・評価

ニノチカ(1939年製作の映画)
4.3
「ルビッチ・タッチ! Ⅱ」にて字幕版を鑑賞。

冒頭、ソ連の共産党員三人組がコメディリリーフとして扱われるのを観て、これは共産主義の錯誤を笑いの種にする映画らしいと予想。

ところが、モスクワから派遣されたお目付役ニノチカの登場で流れは一変。

今迄通り、ニノチカのガチガチの共産主義者振りを笑うのかと思いきや、彼女の方がパリの文明の爛熟や有閑貴族レオンの恋愛遊戯の手管を、冷たいまなざしとハスキーボイスで一刀両断。その鮮やかさにはレオンならずとも怪しい快感を覚えずにはいられない。

そこから大衆食堂で遂にニノチカが笑み崩れる展開も見事で、以降人間的感情を露わにしていく彼女もまた違った意味で魅力的。

また、パリに住むロシアの亡命貴族のかつての栄華が、農奴たちの犠牲によって成り立っていた事に言及したり、スターリンの全体主義は批判的に描いてもニノチカ自身は革命の理想を捨てない、など脚本のバランスも好ましいと感じた。
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