シズヲ

クレヨンしんちゃん ヘンダーランドの大冒険のシズヲのレビュー・感想・評価

3.9
ヘンだヘンだよヘンダーランド~♪本作は序盤からしんちゃんの孤独が鮮烈なんだよな。トッペマの頼みを断ってから上の空のまま日常を過ごす描写、ス・ノーマンの登場でどんどん日常を侵食される下りなど、物寂しい不安感・疎外感のようなものが端々から滲み出ているのが印象的で恐ろしい。更に本作のしんちゃんは年相応に恐怖を抱く場面が少なくない(その上で終盤まで味方らしい味方がたまに顔を出すトッペマくらいしかいない)ので、尚更そういった空気が補強されている印象。しんちゃんの目線から見上げるような仰視のカットが不気味な感覚を煽っていて好き。

不穏なムードも記憶に残るけど、同時にギャグ描写が全編に渡って存在感を示しているのでちゃんと楽しい作品になっている。三馬鹿と化した空想ヒーロートリオに終盤のヘンテコな決戦などの笑える描写が多くてイイよね。「嵐を呼ぶ~」辺りのスペクタクル寄りな映画しんちゃんとはちょっと毛色が違うけど、しんちゃんらしいユーモアに溢れていて単純に面白い。キャラクターも悪役を含めてインパクト抜群で、特にマカオとジョマはギャグ的な造形なのに声優の妖しげな熱演とステレオタイプのオカマ像が却ってシュールな風格を生み出していてスゴい。冒頭でおとぎ話を非現実的と切り捨てていたしんちゃんの大冒険が「めでたしめでたし」なおとぎ話として締め括られる構図も好き。
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