元レンタル担当

ミッドサマーの元レンタル担当のレビュー・感想・評価

ミッドサマー(2019年製作の映画)
4.0
【郷に入っては郷に従え】

スウェーデン🇸🇪
ヘルシングランド地方に位置する小さな共同体〝ホルガ“
この村では90年周期で行われている大祝祭=夏至祭(ミッドサマー)が開催。
ホルガ出身の友人に誘われて、参加することになった米国の大学生たち。
だが、そこで目にした儀式とは思いもよらないものだった…。


【非人道的な宗教と風習】
人類が誕生して長い歴史の中でこのような文明は闇に葬られただけでおそらく存在した。
つまり、外部との接触を拒む閉鎖されたコミュニティだけでは存続することができず、文明が崩壊したことで表沙汰にはならなかった。
本作でも様々な非人道的な宗教と風習が
我々を唖然とさせる。

【カルト宗教による洗脳】
このコミュニティから浮かんだ言葉である。
恐ろしいのは…
“神聖“なものとして儀式が正当化されること。
外部からきた人間には一見、非人道的な行為に映るが、村人には
“生贄になる者こそ救われる“という慈悲深き最も尊い行為だと認識している。

さらに、本当は異常なはずなのに集団心理が働くことで
「風習なら仕方ない」
     ・・・・
と納得してしまうという外部の人間の感覚までもが麻痺することで異常なことに慣れようとすること。

そして、
「あなたを決してひとりにはしない…みんな(家族)がついてるから。」
誰もが無意識のうちに心の拠り所を求めるが…
心にぽっかり開いた穴を埋めるかの如く、付けいるように全てを肯定するという典型的な勧誘手口。
本作でも喜怒哀楽の感情全てを村人達で共有するというシーンが印象的だ。

両者には当初、異様なまでに価値観のズレが生じていたはずなのに結果的に歩み寄る形となった…。

『メッセージ』の
〝サピア=ウォーフの仮説〟じゃないが、
本作を鑑賞する観客の思考にも影響する…
映画を通して一種の集団洗脳というような解釈もできる。
それがいわゆる〝洗脳‘’の危なさかもしれない。

〜鑑賞後のシンキングタイムを経て〜
前作『ヘレディタリー/継承』
初めてアリ・アスター監督の世界観を疑似体験しました。
私にその世界観は到底、理解不能で、ただただ圧倒されたのを覚えています。

そして、本作『ミッドサマー』も…
衝撃の問題作でした(笑)

まず前提として
前作と一線を画すのは超常現象による
説明がまったくつかないといった不気味な感覚ではなかったことです。
人間の狂気ならではこそ成し得た所業でした。
あと、
『犬鳴村』のときにも綴りましたが、
タブーに触れたテーマについて言及したことは素直に賞賛に値すると思います。
それを踏まえた上で…。

作品としては…★★★★★
ホラーというジャンルに対して視覚的暗闇恐怖効果を用いず、むしろ‘’白夜‘’という対極の要素をストーリーに構成するという離れ業をやってのけました。
‘’ホラー=暗闇‘’というセオリーを
ある意味、根底から覆すような画期的な手法だと思います。
そして、人間の狂気の数だけ色彩で体現させたような色鮮やかさは芸術性で観客を魅了したように思います。


個人の感情としては…★☆☆☆☆
いつかはこのようなテーマの作品に巡り合うかも…とは思っていました。
私がまだまだ未熟者だけなのかも知れませんが、正直すごく不愉快でした。
こんな文明受け入れられるはずもないし、
非人道的な風習こそ生命への倫理観を冒涜していると思います。
しかし、そういう嫌悪感を促すのすらもアリ・アスター監督の仕掛けた罠にはまってしまったように思います。
ある意味〝嫌悪‘’と〝魅了‘’は紙一重なのかもしれません。
好き嫌いがはっきりと分かれる賛否両論ありますが、鑑賞すると衝撃的過ぎて脳裏に焼き付いて離れない作品といった感じです。
間違っても自分以外の人と鑑賞することは絶対オススメしません(笑)

数年は鑑賞しなくていいかな💧

作品としての評価なら❺なのですが…
個人の感情を介入させて…
作品と感情を鑑みて評価するなら❹で…。


映画の歴史で数々の傑作映画を生み出してきた‘’鬼才‘’と呼ばれる監督達。
彼らにしかない独特な視点が観客を魅了し、それが‘’鬼才‘’と呼ばれる所以。
そういった意味でアリ・アスター監督は…
新たなる‘’鬼才‘’の誕生である。


あのラストの彼女の微笑みは忘れられない。
そこには以前のように不安になってパニック発作を起こしていた彼女の面影はまるっきりなくなっていた…。

〜それでは皆さんいい夜を🌙〜

※ 録画していたのを鑑賞(WOWOWプライム)
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