かか

ミッドサマーのかかのネタバレレビュー・内容・結末

ミッドサマー(2019年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

個人的には、聞いていたほど胸糞映画だと思えなかった。

主人公が、自分の人生を生きられそうで良かったなって思います。セックスシーンとかくっっそきもかったけど。

主人公のダニーは、家族関係も元々上手くいってなかったんじゃないのかな。妹のことが不安材料になっていて、いけないと思いつつも妹にうんざりしていたんだと思う。両親もダニーに対して妹をお願いね、と小さい頃から重圧をかけてきたんじゃないのかな。

だから自分が我慢すること、自分のことよりも誰かを心配する事が当たり前に育ってきたんだと思う。

彼女はずっと恋人にも不満があったんだろうし彼の友達によく思われていないことも知っていたと思う。でもだからこそ、自分が変わらなきゃ、自分がよく思われるよう努力しなきゃって、自分じゃなくて他人軸で考えてこれまで頑張ってきたんだなと思ったの。

そういう考え方だから寝ている間に自分だけ置いていかれる夢なんて見てしまうんだよね。今の自分は、家族のことでいっぱいいっぱいで、他人を優先できていないが故に好かれている自信が無いから。

だけど祭りで偶然女王として認められ、彼女の世界を構成していた自分以外の主要な人間が全員死んで、初めて彼女は自分を大切に出来たんじゃないかな。初めて自分の存在意義を自分によって確かめられたんじゃないかな。

両親(期待)
妹(自分に助けを求める人)
恋人(自分を好きになってくれる最後かもしれない人)
恋人の友人(恋人を無くさないために大切にしなければならない相手)

それらがどんどん消えていって、その人たちありきの人生だったのが、どんどん自分中心の人生に無意識的に変わって行ったんだろうね。荒療治だね。

恋人がセックスをしていることを勘づいた時、ダニーは吐くほどショックを受けていたけれど、それによって、やっと恋人にも諦めが着いたんだと思う。ほら、やっぱりね、この人はもう、私を好きじゃなかったんだ。って、認めたくても認められなかったことが、認められた機会だったんだろうね。悲しかっただろうけど、ひと通り悲しみ終えたら安心すらしていたんじゃないのかな。

だから最後は、恋人を殺めることを自分で自分のために決め、燃え盛る神殿を見て最後さわやかに笑ったんだと思う。もう彼女を縛るものは何も無くなったから。(少なくともあの村にいる間は)私はそこまで胸くそだと思えなかった。良かったねって思えた。キモかったけど。

あの村を出たら、洗脳状態が解けて苦しくなるだろうから、もうダニーはあそこでずっと暮らしてください。もう辛い思いしなくていいよという思いになっちゃった。

ただ、ペレはダニーを振り向かせるために、ここに連れてきて妹とクリスチャンを結ばせて、ほかの友人も死ぬよう仕向けてダニーの気持ちを自分に向けさせたのかもって思っちゃって、ペレめっちゃキモいね。家族死んだばっかりなの知りつつ、儀式に立ち会わせてたしね。判断能力を奪いたかったんだろうね。純粋に喜びだと思って立ち会わせたのかもしれないけど、大学通った人が通常の世間で育った人の感覚が全く理解できないわけないと思う。

でも、ずっと気持ち悪いかんじ、気持ち悪いのにみんなニコニコしているかんじ、気持ち悪いことが当然になっている感じ、喜ばしいこととされている感じ、徹底されたおかしさがあって、もはや芸術だと思った。名作何じゃないかなとは思う。キモかったけど。
かか

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