このレビューはネタバレを含みます
イタリア映画祭2019にて。
測量技師のルチアは郊外の農地を大型商業施設にする計画の為に、現地の測量を始める。そこで地質に関する危険を隠すためにこれまで多くの偽装が行われてきた事実に気づく。
事実を告発し、正しい事をしようとする気持ちと、仕事を失う怖さから口をつむごうとする気持ちに揺れる彼女の前に、「神の母」を名乗る聖母が現れる。。。
彼女にしか見えない聖母が行く先々に現れ、建設計画を中止させるようにルチアについて回り、時に喧嘩もするというとてつもなくトリッキーな設定なのだが、シングルマザーのルチアが仕事に、恋愛に、子育てに奔走する毎日を過ごすうちに純真な気持ちを無くしてしまった事へのしっぺ返しの様な、または、内なる自分からの警告のメタファーの様にも感じる。
はたから見たら2人のヌケたやり取りが笑いを誘い、とりわけ澄ました顔で実力行使に訴える聖母なんてシュール過ぎて斬新。
人間の滑稽さを別次元、斜め上から眺めている様な感覚を味わえ、光彩をふんだんに添えた美しい映像が更に美醜のコントラストとして効いている。
役者の演技による心情表現を後押しする楽曲のチョイスが素晴らしく、ラストは前向きになれる人情味溢れるコメディ。