Nさん

サウナのあるところのNさんのネタバレレビュー・内容・結末

サウナのあるところ(2010年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

ジェンダーニュートラルなイメージのあったフィンランドでも、「男は弱いところ見せてはならない。泣いてはいけない。」という価値観が存在するのかと驚いた。

社内から寡黙な男にさせられた人たちは、サウナの中だけでは身も心も裸になり、普段誰にも言えないような心の奥底に沈んでいる思いを語っていた。

序盤の夫婦で入るサウナは、微笑ましかった。

中盤〜後半までは、苦しみの吐露の連続だった。
人の悲しみを覗くのは苦しいけど、悲しみの感情を分かち合うと、自分の悲しみも和らぐような感覚がする。
たとえ同じような経験をしていなくても、自分だけじゃないんだと思えた。

双子の片方を亡くした男が、「若い時はなんでも一人でできるし、そうしなきゃいけないと思っていたけど、今は人と分かち合いたい。孤独でいることは最悪だと、年月を経て分かった」と語っていた。
「すべてのことは理論で説明できると思っていたが、感情は矛盾だらけだ」と。
心に留めておきたい言葉だ。

ほぼ全員裸体がそのまま写っていて、当たり前だけど、人の体って様々でみんな違うんだなと思った。

昔ながらの仕事(主に肉体労働)をしていたおじいさんがたくさん出てくるので、その体で稼いで、語る話通りの経験をして、長い人生を歩んできたんだなと思うと、労りのような気持ちが生まれる。

これも当たり前なんだけど、おじいさんは最初からおじいさんなわけではないので、その人がここまできた道のりに目を向ける感覚を知った。
お年寄りに対して、見る目が変わった。

この映画のコラムであとから知ったけど、フィンランドでは、一家に1つサウナがあることも普通で、街中にもサウナがあって、老若男女問わずサウナを楽しむらしい。女性でも全裸で入ることもあるらしい。
ビジネスパートナーと一緒にサウナに入って、親睦を深めることもあるらしい。

日本で言うお風呂の湯船や温泉のようなものなのだろうか?
体を清潔にすることや健康のために汗を流すことを目的としているのはではなく、心身の安らぎをサウナにもとめているのだろうか。

ロリュウに包まれたあと、海や湖で泳いだりするシーンがとても羨ましかった。
そんな風に、生きていることを実感してみたい。
自然の中で身も心もほぐれる感覚が得られたら、どれだけ幸福なんだろうと思った。

心も体も思い出も苦しみも死ぬまでずっと自分から離れることはなくて、ずっと自分と付き合い続けて一緒に日々を積み重ねながら、人は生きていくんだなと思った。
Nさん

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