ボブおじさん

バスケットボール・ダイアリーズのボブおじさんのレビュー・感想・評価

3.6
バスケットボール ワールドカップでの日本代表の健闘を祈りつつ、タイトルにバスケットボールがついたこの作品を。

原作は、ドラック時代の革命的詩人ジム・キャロルの13歳から16歳までの日記の断片を集約した「マンハッタン少年日記」。

マンハッタンのダウンタウンでカトリック系高校のバスケットボール部に所属するジム(レオナルド・ディカプリオ)は、放課後ともなれば仲間たちと場末の町で暴れる問題児。親友を白血病で失ったジムはそんなつらい現実から目をそらそうとヘロインに手を出してしまいドラッグ地獄から抜け出せず、苦しみもがき続ける。

原作を先に読んだ立場から言うとディカプリオを主演に据えたことで、かなり感傷的に改変したなという印象。これを改変と見るか改悪と見るかは、本作をディカプリオ映画として見るか、1960年代のマンハッタンのリアルな若者を描いた作品として捉えるかにもよるだろう。

原作のジムは、あんなに泣かないし、悲劇的でもない。次々と問題が襲い掛かるのは映画的と言えば映画的だが、原作では冒頭から最後の一行まで、彼の生き方も周辺の環境もほとんど変わらない。

その中に、彼の破天荒でユーモアに満ちた痛快なドラッグ生活が巧みな表現で描写されており、このまま映画化しても十分に面白くなると思うのだが😅

元々演じる予定だったと噂されるリバーフェニックスがこの役を演じていたら、また違った映画になっていたかもしれない😢



〈余談ですが〉
日本では、この映画をディカプリオの映画と位置付ける方も多いと思う。たしかに本作でのディカプリオの演技は、賞賛に値するとは思う。だが、私には特段驚きはなかった。彼の演技力の高さは既に当時最年少でアカデミー賞助演男優賞にノミネートもされた「ギルバート・グレイプ」で実証済だったからだ。

元来ハリウッド映画では障がい者役は、役者の演技力を披露する役と位置付けられ、通常は演技力が高い役者にしか障がい者役を与えられることはなかった。過去のアカデミー賞受賞者の中にも障がい者を演じた役者は多い。

一例を挙げれば、「レナードの朝」で元々医者役だったロバート・デ・ニーロがロビン・ウィリアムズから難病患者役を奪ったのは有名な話だ。

だが、近年になりそのことが障がい者俳優の仕事を奪っていると問題になり、最近の作品では障がい者の役を実際の障がい者が演じることが増えてきた。

彼らに機会を与える事は、基本的には良い事だと思う反面、本人とは全く違う人物を演技力で演じる〝役者としての見せ場〟を奪われたと感じる健常者の役者も多いのでは😅