ボブおじさん

今夜、ロマンス劇場でのボブおじさんのレビュー・感想・評価

今夜、ロマンス劇場で(2018年製作の映画)
3.9
映画が娯楽の王様だった1960年代の古き良き時代を背景に描かれる懐かしさに溢れたロマンティックコメディ。モノクロ映画の中のヒロインと現実世界の青年が織りなす切ない恋の物語を綾瀬はるかと坂口健太郎が素敵なファンタジーとして観せてくれた。

映画監督を目指す健司がモノクロ映画のヒロイン美雪に心を奪われ映画館に通い続けていたそんなある日、美雪がスクリーンを飛び出し健司の前に現われる。モノクロ姿のままの彼女をカラフルな現実世界に案内するうち、健司と美雪は少しずつ惹かれ合っていくのだが…。

冒頭のスクリーンの中のヒロインは、明らかに「ローマの休日」や「オズの魔法使い」へのオマージュだろうし、銀幕の中から憧れの人が飛び出して現実の世界で共演するのは「カイロの紫のバラ」。特に人には言えない2人だけの秘密を抱えた生活とヒロインの抜群のファッションセンスは「ローマの休日」を思わせる。

またクライマックスのあるシーンは、岡田英次と久我美子が1950年の映画「また逢う日まで」で既に演じているし、老境の主人公が自分の恋物語を語り出す手法は、「シザーハンズ」や「タイタニック」「きみに読む物語」でも使われていた。

そもそも映画館や撮影所を舞台やタイトルに使った映画は、世界中に枚挙にいとまがない。

だが、これらの演出がパクリではなくオマージュとして受け取れるのは、〝人のぬくもりに触れると消えてしまう〟という秘密があったからだろう。この設定により、物語にオリジナリティが出て過去作の引用も素直に受け入れることができた😊

撮影所内でのコメディパートは北村一輝が盛り上げて、現代パートはベテランの加藤剛が引き締める。ラストではサプライズも用意されており、古き良き映画の雰囲気も味わえるいい映画だった。



〈余談ですが〉
邦画なので当然、柄本明も出ています😅