ちろる

幸福路のチーのちろるのレビュー・感想・評価

幸福路のチー(2017年製作の映画)
4.2
願った夢は悉く叶えられず。
寄り道や回り道ばかりでなかなか満足いかない。

幸せって何かわからないけど、大人になると満たされない時間ばかりが増えていったチーが辿り着いた幸せの意味とは??

人に胸を張って言える綺麗な道を歩むだなんて御伽噺なんではなかろうかとたまに思う。

だんだんと幸福な感覚が消え失せて、目の前の事をただこなすことに一生懸命になって一日が消費されていくチーが大好きだった祖母のお葬式を機に人生の大きな帰路に立たされてしまう。
少女時代の様々なエピソードが細切れに回想されて、それが今の曖昧な自分を顧みるエッセンスになる。そんな大人の女性のためのものがたりであり、少しだけ高畑勲監督の『おもひでぽろぽろ』と似ている構造でもある。
しかし台湾を舞台にしているとだけあり、当時の台湾の複雑な政治絡みの教育背景とか民族差別なんかも丁寧に描写されていて主軸とは違う部分でも重厚感のある内容になっている。

作品はパステル調の可愛らしい絵面ですが、どちらかと言うとこれは、アラサーやアラフォーあたりの女性にはビシバシ刺さるのではないのだろうか?
私もドンピシャ、なんか無性に心に打ちつけてきました。
舞台は台湾ですが、こういうのは万国共通なのですね。
アニメーション技術もプロットの作り方も決して上手いわけではないのですが、その瑞々しさや素朴さが作品のメッセージと重なってとてもオリジナリティ溢れる作品なっていたのも逆によかった。
これからの台湾アニメも楽しみです。
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