ノラネコの呑んで観るシネマ

82年生まれ、キム・ジヨンのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

82年生まれ、キム・ジヨン(2019年製作の映画)
4.5
期待通りの素晴らしい出来。
原作小説は心を病んだジヨンが夫と共に精神科を受診し、主治医が彼女が生まれてから辿って来た人生を聞き取り、記録したものという設定で、小説ならではの様々なロジックが駆使されている。
だからそのまま映像化するのは絶対無理。
構成は当然変えてくるのだろうなと思っていたのだが、精神科受診が終盤に移動している(しかもそのことにも意味を持たせている)以外は、話そのものは非常に忠実。
ただ時系列は現在のジヨンと夫の生活を軸に、彼女の心の中で過去を振り返るというものになっている。
キャラクター設定も若干変わり、終盤は映画独自の脚色も効いてくる。
主人公夫婦を演じるチョン・ユミとコン・ユのコンビは抜群の安定感。
「ガラスの天井」という言葉はよく聞くが、それ以前にガラスの壁に閉じ込められてしまった平凡な女性の物語に思いっきり感情移入。
たぶん主人公が感じているガラスの壁、透明な差別って言うのは日本の事情もほぼ完全に一致するんじゃないかな。
政治的にいがみ合っていても、やっぱよく似た社会だと改めて思った。
コン・ユみたいな夫はむしろ少ないだろうけど。
物語の閉じ方は小説とは全く違うが、なるほどこれはこれでアリ。
ある意味、最強のデートムービーだろう。
ブログ記事:
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