kassy

フェアウェルのkassyのレビュー・感想・評価

フェアウェル(2019年製作の映画)
3.8
オンライン試写にて。

オークワフィナがアジア系で初めてゴールデングローブ主演女優賞を受賞された本作。非常に楽しみにしていたがコロナで延期されたため、ようやく10月に公開です。

アメリカへと移住した主人公家族が、末期癌と診断された祖母に対して嘘をつきながら従兄弟の結婚を口実に中国へ戻る。ルル・ワン監督の実体験に基づいた作品。

この物語には、アメリカへと移住した家族と日本へと移住した家族と中国に住み続ける家族が出てくる。
祖母に宣告しないという"嘘"は中国様式。アメリカナイズされた主人公は、その判断をなかなか理解する事が出来ないまま、どうしたらいいのかというモヤモヤを抱えたまま祖母へと会いに行く。

祖母にとって本当に良い事って?
アメリカ式で考えたら違う判断になる。でもここは中国であり、郷に行っては郷に従うことになる。

祖母は祖国の象徴でもあると思う。
主人公の父と叔父は、25年も中国で顔を合わせることはなかった。
祖母が居なくなったら、もはや戻る事はあるのだろうか?
年月は思い出の中の景色を消し、主人公にとって祖国の姿は祖母だけなのだ。
アメリカ人であるが、生まれは中国。アイデンティティで揺れ動く主人公の不安な気持ちは、祖母=祖国を失う事と重なりより不安さを増す。

ただ、この映画の面白いところは、父の兄弟が日本に移住しており、従兄弟の結婚相手が日本人の女性なのである。

同じアジアではあるが、決して中国と文化は同じではないということがそこらかしこに散りばめられており、この映画の興味深さを増している。

中国の結婚様式、墓参り様式を知る事の出来る面白さもある。
このあたりはコメディ感が強い。
本当は病気の祖母が張り切って従兄弟の結婚式を取り仕切っているのが微笑ましいし、墓参りで何度もお願いをしてお辞儀しまくるのも微笑ましい。

ナイナイ(おばあちゃん)を見ていると、自分の祖母に重ねてしまう。
私達家族も、祖母に嘘をついている。でもそれは祖母のための嘘だ。自分はその判断を知った時に残酷で悲しいと思ったけど、祖母がその嘘をつく事で元気でいられるなら、それはきっといい嘘なんだ、と自分を納得させた。
誰しもきっとつく嘘。
自分だったらどうする?どうしてほしい?そんな事を考えながら見てしまう、そんな身近な映画である。




以下、監督オンラインQ&Aの印象的だった回答について

鳥について
スピリチュアルみたいなもの
人生について、説明しようと思っても出来ないようなもの
人生に意味を見出すのは自分次第
主人公の声が遠い中国まで届いた

日本人女性の起用について
実際に監督の従兄弟が日本に住んでいて奥さんが日本人である
アメリカ映画だと白人との比較になるが、中国と日本はアジアだけど文化が違うと言うことを楽しんでもらえると思って出した。
彼女本人が少しシャイでクスクス笑うところがリアルなのだと思われる
kassy

kassy