ノラネコの呑んで観るシネマ

イップ・マン 完結のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

イップ・マン 完結(2019年製作の映画)
4.5
有終の美。
愛妻を亡くしてシングルファーザーとなったイップ・マンが、反抗期の息子に手を焼いて、留学させようとサンフランシスコに降り立ち、ブルース・リーと再会する。
ビジュアルが若すぎだけど、70代になった庶民のヒーローが立ち向かうのは人種差別。
戦う相手はレイシストの海兵隊のカラテ使い。
100年以上アメリカに暮らしても、二級市民として馬鹿にされる華人の誇りをイップ・マンが取り戻す。
例によって格闘シーンはてんこ盛りだが、前作のマイク・タイソンみたいな変化球は無しで正攻法。
白人の偏見を払拭するのと同時に、身内だけで固まっていた同胞の心も変えるイップ・マンがカッコよすぎ。
当時の華人たちは白人に中国武術を教えるのを許さず、ブルース・リーがその禁を破ったことで広まってゆく。
異文化交流があって、初めて偏見は消えてゆくもの。
悪役はレイシストで白人至上主義者なんだけど、華人を馬鹿にしながら、自分は思いっきりカラテに心酔してるのが可笑しい。
そっちはイイのかよw
まあ世界を自分中心で都合よく考えるから、レイシストなんだろうけど。
シリーズの歴史を振り返るエンディングには、思わず目頭が熱くなった。
しかし、武術家として理不尽な扱いには抗うことを信条としてきたイップ・マンが、北京に跪いた今の香港を見たらどう思うのか。
香港映画もますます本土と同化され、消えてゆくのだろうな。