ENDO

女性操縦法 “グッドバイ”よりのENDOのレビュー・感想・評価

3.8
終盤の取って付けた展開は余りの定型に噴飯。そこまではコメディからの復讐劇として最高だったのに。結局太宰的な粘着質に落ち着くのは悲しい。二重化された田舎娘/令嬢の怖さに震えながら『good-bye』と言われて終わっていたなら悄然としながら颯爽と劇場出られたのに…覗いていたものに覗き返されるという恐るべき余韻も霧散。森雅之のクズを高峰秀子の本人に重なる超人性によって断罪(勧善懲悪だけど)するも灰がちになりてわろし。高峰秀子が自らの恋愛に立ち返って大衆の日常に溶け込んでしまうとは。人間界に引き摺り下ろしてどうする…田舎娘として登場した底の見えない悪魔的魅力をすべて剥ぎ取ってしまう蛇足に大いに絶望した。ベートーヴェンピアノソナタ14番『月光』をショパンと間違えるディレッタントとしての浅はかさを指摘するのもデートレイプの覆しとして切れ味抜群だったのに。取って付けた円環構造にあきれ果てた。とにかく高峰秀子の仕草に映画の神が宿っているので、それは否定できない凄まじい魅力だ。愛人との関係を終わらせるために美貌を利用するという設定からしてクズな森雅之の倦怠感はその存在だけで尊いのに。許すまじ。僕にはノワールであって欲しかったのだ。原作を参照すると一人目の女との別れとアパートへの闖入とカラスミの件だけらしい。ほぼオリジナルストーリーなのか。
ENDO

ENDO