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9人の翻訳家 囚われたベストセラーのJAMのレビュー・感想・評価

3.3
世界各国から集められた9人の翻訳家による二ヶ月に渡るベストセラーの翻訳作業──しかし、その間に本編の原稿が何故か流失してしまった。容疑者は9名。外界から遮断された地下の空間から如何にして原稿を、また誰がそれを持ち去ったのか?


『私は文学を愛している』
時系列の操作 小出しされる情報とミステリとしてなかなか楽しめた一作。まずこの異国の人々が一堂に会して翻訳をするという何かなければ嘘なシチュエーションが好き。トリックに関しては並というかそうだろうなの気持ちが強かったが、そこに至る動機が実に繊細なそれで受け入れやすかったとでも言うようか。中盤に犯人を明らかにする展開がこの辺り 上手く効いていて、最後のどんでん返しも気持ち良く享受できる。小説家 翻訳家 編集者 小説出版に携わる全ての人間が関与した話であることの意味が感じられる良作である。そういう意味では人間ドラマかな。翻訳家達の多言語切り替えトークのシーンがあんまり見ないそれでよかった。状況も相まって、五月雨に飛び交う様が爽快ですらある。
以上。
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