このレビューはネタバレを含みます
今回のEUフィルムデーズで一番感動した映画だった。暴力シーンは怖かったが、出産シーンや母乳があふれてTシャツが濡れてしまうシーンなど迫真の演技でとてもリアル。自動車整備工場の２階のトイレで搾乳しながら思わずむせび泣いてしまうシーンも胸に迫るものがあった。憎らしいまでに落ち着いて、厳しく主人公マラを説得する相談員が百戦錬磨の笑顔で、子供を産むことは出来る、でもそれだけではママにはなれない、とガツンと言ったり。親に見放されて里子先を転々とする苦しみはあなたにはわからない！とマラにキレられても、私にはわかるわ、わかるのよ、と、そこで間はあるがその理由は明らかにされなかったところも良かった。ロックが誰に札束を見せて子供の居場所を突き止めたのか、映画の中では見せてくれなかったが、この相談員なのかな。いずれにしてもあのええ加減なイタリア男をついに振り切る決意をしたマラはようやくママになれそうだった。イヴァンの目にぼんやりと映る世界が映像化されたシーンがところどころ挿入されていた。とうとうマラを初めて見た時、マラはこの映画で初めて見せる素直な笑顔だった。これは見ていて嬉しくなったシーンだった。
