メル

エッシャー 視覚の魔術師/エッシャー 無限の旅のメルのレビュー・感想・評価

4.5
エッシャーの版画は知っていても彼の人生、考え方、創作活動については全く知らなかったので、こうゆう作品に出会うと本当に「ありがとう!」という気持ちになる。

病弱で落ちこぼれだった少年が絵を描くことに魅了され、生涯に渡って試行錯誤を繰り返し、版画の分野で誰も到達したことの無い素晴らしい作品を生み出す。
それだけでも感動的なのに、全ての作業を1人でこなし常に高みへ高みへと進んで行く姿はまさに天晴れ!と言うしか無い。

それでも本人は自分の作品は自分の求めてきたビジョンを実現していないとして、全てが失敗作だと言う。

几帳面な彼らしく多くの残された日記や手紙、息子たちへのインタビューを通して作風の変遷が細かく描かれているのも嬉しいし、何と言ってもそれらの作品が動き出すのも感動する。

作品「上昇と下降」を具体的に説明する場面で「インセプション」が使われていて「そう!そう!」と思わず声に出したくなる。

C.S.N&Yのグラハム・ナッシュのインタビューからは両者の人柄が伝わって来るし、ミック・ジャガーの依頼を断った手紙のメッセージにもエッシャーの生真面目さに笑った。

彼の様な純粋なる芸術家にはもう30年くらい人生をプレゼントしてあげて欲しかったなぁと思ったのです。
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