1984

パラサイト 半地下の家族の1984のネタバレレビュー・内容・結末

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

示唆に富んでいていろんな解釈が成り立つ作品だけど、私にとってはこれは半地下で暮らす一家の生命力を描いた映画。

上流一家に見つからないようカサカサーっと逃げ回る半地下一家の動きはまさにゴキブリのそれ。ゴキブリ視点でニンゲンを見るっていうコミカルだけど決して明るくはない構造が下地になっている。
そしてゴキブリは嫌悪される生き物だけど、たくましい生命力の象徴でもある。

洪水が起ころうとも地下室の夫婦っていう外敵に襲われようとも根絶はせず、金持ちの家に寄生して生き延びるしぶとさ、たくましさ。
醜悪な命の輝きとでもいうべきか、決して目に楽しい絵面ではないんだけど、グロテスクとコミカルをミックスさせるポン•ジュノ監督の手腕がずば抜けていて、圧倒的な表現力に有無を言わさず惹きつけられた。

金持ちの家にパラサイトしていく過程を描いた前半は面白おかしいのに、薄暗い半地下よりさらに暗い地下の夫婦が登場してから様相は一気にホラーに変わる。
動画の送信ボタンをめぐってのドタバタコメディから、転げ落ちた前任家政婦の頭がぶつかるいやーな音でぱっとグロテスクに振れる落差。
金持ちと貧乏っていう対比を誇張した、リアリズムよりも戯画寄りのタッチだからより一層その落差が絵画的に映える。
洪水の中あふれるトイレの上でタバコを吸う長女のシーンとか、汚いんだけど哀愁が漂っていてもう最高だった。

母なる証明もそうだったけど、醜悪かつコミカルな独特の世界観が本当に唯一無二。
後味良くないし特に感動もしないし全然楽しい話ではないんだけど、表現力に全振りの星5。
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