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パラサイト 半地下の家族のeyeのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
3.9
パラサイト 半地下の家族 (기생충)

ジム・ジャームッシュ 監督作品
『The Dead Don't die』

クエンティン・タランティーノ 監督作品
『Once Upon a Time...in Hollywood』

両作品を抑えて韓国映画史に残るパルム・ドール(最高賞)の快挙を成し遂げて歴史に名を刻んだ 『パラサイト 半地下の家族』

しかも満場一致

2018年は日本の『万引き家族(Shoplifters)』がパルム・ドール受賞ということで アジア映画は 今とても熱い

共に受賞したテーマとして「家族」を描いた作品だったのは何かの偶然か はたまた 必然か…

この映画のストーリーは

低所得層 キム一家が住む半地下 ボロアパート
富裕層 パク一家が住む非常にモダンな大豪邸

その対比を中心に捉えつつ タイトルである「パラサイト」の意味を追う映画

ちょっと横道に逸れるけど

日本でも同じように格差・格差と声高に叫ばれ 大卒からのフリーター・非正規雇用問題や寡婦(寡夫) の貧困問題が取り上げられていた

最近の日本は更に侵食した印象で

恋愛や結婚 そして 出産問題からの人口減少問題に加えて

経済を回すためと国家維持のため移民を受け入れて外国人労働者を積極的雇用している

それから親が子への教育を受けさせるお金ないため 遂には就学援助あるいは生活保護に陥るという大問題まで広がる

この映画と同じように仕事が低賃金もしくはちゃんと働いても賃金格差により 家族の生計が成り立たない現実がある

上がらない給与面と大きく負担となる税金面の比重が重すぎて全く釣り合わない相対的貧困という印象が圧倒的になっている

一方で日本の大多数一般人に対して 理由は多々あるであろうけど 拝金主義のようなことをTwitterを通じてやっている 大富豪の高笑いをメディアを通して見せつけられているこの頃

この映画を観ていると この賃金格差について似通った社会問題が韓国でも描かれる

資本主義の結果で支配者・搾取者/貧民・大貧民の構図が生まれているかのよう

立ち読みしたパラサイトのパンフレット内には韓国国内の格差に関するデータも書かれていた

この映画は芸術あるいは商業映画としての観点とパラサイトしなくてはいけない状況をコミカルに そして ユーモアを交えつつ シリアスになりそうでならない絶妙なエンタメに昇華されている

低所得層 キム一家のそれぞれのキャラクターのコメディ力やキャラ立ちに唸ってしまう

軽快なリズムとテンポで展開し 特に中だるみしやすい中盤には「地下」を描いていくのがとても良かった

かたや 富裕層パク一家のキャラクター設定も絶妙で各々にユーモアがあって愛される人物像になっている

主・従の関係はハッキリと優劣を明確にさせ
そこに主は対価/従は付加価値をつける

それと同時に見えない階級がこっそり潜んでいる

2つの家族は距離でいえば 明らかに近くに感じるけど その差は上空を飛び越え 宇宙レベルくらい違う

ネタバレ厳禁のため深い内容については書けず概念や取り巻く概要しか書けないけど

キム一家の父ギテクの思想は「何も描かない無計画」を掲げているが 長男ギウは ある段階からプランを描く

それがこの映画の肝となり象徴となる

半地下自体は北朝鮮からの攻撃を避けるために生まれた防空壕のはずが 現実は住処として用いられている

そして貧困者達の居住空間に変わり
便所コオロギが多数寄生している

現実は富裕層が作り上げて暮らす空間に寄生する貧困層が地底人ならぬ便所コオロギに成り下がっている

劇中の2つの家族が巻き込まれる運命には妙な緊張感と悲哀感がある

そこに現代感をブレンドして生きていく上で半地下生活がもたらすルサンチマンとして苦悩や葛藤も描かれている

劇中に登場する「山水景石」が長男ギウの心にもたらす森羅万象の慈愛や慈悲深さに救われたような印象を抱いた

水害により水没しそうな中で回収した山水景石がなかなかな酷い使われ方もするが…

単なる警鐘や警告とも違い 何かのメッセージとも思えないが 混じり合ったテーマがディストピアに通じてることは確実にいえる映画だった
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