恐らく『万引き家族』と比べて、この映画を鑑賞した人が多いのではないでしょうか。僕もその一人なのですが、両方とも現代社会の貧困という問題を扱っていることに変わりはないけれど、「万引き」の方は、ありのままの日常の貧困を淡々と描く中で、本当に大事なのはお金ではないんじゃない？という、是枝裕和の問題提起の映画となっているのに対して、『パラサイト」は、圧倒的経済格差の中に黒々と淀んでいる異常性がメインで、かつ、その異常性さえもエンターテイメントにしてしまっているところが、二つの大きな違いのように思いました。「万引き」は後になって思い出して、しみじみ考えさせられたり、“引きずる”映画でしたが、「パラ」の方は大きなネタがバレてしまえば、それで終わり。「何だか恐かったけど面白い映画だったね」で終わり。僕が日本人だということもあるかも知れませんが、「万引き」のウェットな感じの方に、どうしても惹かれていってしまうところがあります。
思うに韓国は太平洋戦争以降、今に至るまで景気が良かった例しがないんじゃないかと思うんですね。一部の財閥が富を独占し、一般庶民の中には、富裕層への恨みつらみが一定の水準を保ったまま、ここ何十年か澱のように積もり続けているんじゃないかと。
韓流のドラマなんか見ていると、若者の失業率は高いままで、中高年はいつ会社をクビになるかも分からない不安な状況の中で暮らしているようなシチュエーションのものが多いですよね。「パラサイト」は、そういう長年変わらない経済事情と国民感情を背景に生まれてきた映画であって、
