映画漬廃人伊波興一

パラサイト 半地下の家族の映画漬廃人伊波興一のレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
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残念ながら世評に抗う事になりそうです。
私は全くダメでした。
ポン・ジュノ『パラサイト 半地下の家族』


私の中には(ウソらしいホント)と(ホントらしいウソ)の境界線があります。どちらか映画的なのかはあまりに明白な事。

ホントに近づく為には撮ってはならないものの境界ギリギリまで足を踏み入れなければならない。ですが踏み込んでしまっては、もはや映画でなくなってしまう。ウソに戻してやらねばならぬ意味でその直前で立ちどまらねばならない。

映画の衝撃とはホントを描ききる事ではなく、その手前で聡明に回避することで生まれる。と思うのです。

ロベール・ブレッソンの『ラルジャン』や阪本順治の『トカレフ』、また北野武『ソナチネ』はそんな余韻がありました。

近年の濱口竜介『寝ても覚めても』も同様です。

ポン・ジュノ初期の佳作『吠える犬は噛まない』や『殺人の追憶』『グエムル 漢江の怪物』などにはまだそんな慎ましさがありました。だから『殺人の〜』のラストは衝撃的だったのです。

近年のカンヌ出品作品で、そんな(踏み込んでしまった)映画たち
河瀬直美『殯の森』
是枝裕和『誰も知らない』『万引き家族』等

これらの映画は衝撃的でも何でなく、だからこそ審査員の受けが良かったのかもしれません。
臆面もなく堂々と踏み込んではしまった映画が生み出すのは衝撃ではなく、多弁や饒舌。

多弁や饒舌を誘発する映画にはどこか警戒してしまうのは私だけではないと思うのです。