れおん

パラサイト 半地下の家族のれおんのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
4.0
(2021/05/17)

 半地下で毎日を凌ぐように暮らす貧しい家族が、ある依頼が舞い込んできたことで、転機が訪れる。財運と合格運を齎すという"山水景石"と共に、家族は欲に吸い込まれていくように変貌していく。そして、物語が進むにつれ、衝撃的な光景を目にすることとなる。果たして、半地下の家族に染み付く「臭い」を、彼らは拭うことができるのか。

 第92回アカデミー賞作品賞を取るべくして受賞した作品。名作と言われる「映画」として、特に問題がない。非の打ち所がない。まさしく、アジアの熱量が詰まった映画だ。

 韓国における階級社会の問題を「映画」で世界に伝えた。それもわかりやすく。登場人物や環境のバックグラウンドを如何に簡潔かつ確実に、物語の「起承転結」に組み込むことで、観客に共感を生むように伝えるかが、メッセージ性ある映画の最も重要な要素の一つである。それも見事に完璧な脚本で、さらには、芸術性が高い演出と見やすさを重視した編集は、圧巻としか言いようがない。

 スクリーン一つで行き来する、高低差のある別々の階級から除く世界。半地下から覗くその世界を、地形や階段といった物理的なものだけでなく、想いや考え方などの心理的な領域までもを、ショット構成で明らかにする。その世界の境界線には、「臭い」というわかりやすい線引きの他に、人生観までもが鮮明に違った。異なる環境に生まれてきてしまったなら、その環境に染まるしか生きる道はないのか。環境を抜け出す唯一の方法は「お金」。それさえ手に入れれば、人間は変わることができるのか。「ソファの上」と「机の下」の世界はそこまで大きく違うものなのだろうか。

 「みんな優雅だな。」ギウのその一言に込められた想いは計り知れない。半地下で暮らす者は、ひょんなことから生活が奪われてしまうことは日常茶飯事。一方、高層階で暮らす者にとっては、事がうまくいかずに、ただただがっかり。あからさまに対照的な現実を突き付けられると、人間の心には罅が入る。知らずにいれば、ただちょっとした希望を持てれば、人間は生きていけるのに、上を突きつけられると心が痛む。そして、人間としての尊厳を蝕まれるか、生きる目的を失うと、心は壊れ、理性を失い、衝動的な行動をとってしまう。誰も悪くはない。深く感情が備わってしまった動物である人間が、この資本主義社会の落差を認識して、壊れてしまうのは必然的である。

 人は無計画の方が良い。人生、その通りには行かない。その通りである。"山水景石"の行末のように、流れに身を任せて生きることが正しいのかもしれない。

(2020/02/16)

半地下で毎日を凌ぐように暮らす貧しい家族が、ある依頼が舞い込んできたことで、転機が訪れる。家族は、欲に吸い込まれていくように変貌していく。そして、物語が進むにつれ、衝撃的な光景を目にすることとなる。

第92回アカデミー賞作品賞。まさに快挙。アカデミー賞はさすがに取れないと思っていたら、取りました。話題性だけではなく、作品としても素晴らしい。取るべくして取った作品。

映画の類として、登場人物のバックグラウンドをどう描くか、それを起承転結、ストーリーにどう埋め込み、見る人に何らかのメッセージを届けることができるか、が非常に重要だと思っています。パラサイトでは、見事に表現されている。完璧。すべての人物を行動や言動によって、性格が伝わってくるし、ストーリーの展開の持ち込み方も、その人にあった展開になる。「転」のスパイスの入れ方も、後半にかけて絶妙に"パラサイト"に掛けて、面白みがある。韓国の社会問題にも、忠実に踏み込み、後味悪く残すこともない。非の打ち所がない。

一方、「映画」として、大切な要素である『共感』はできなかった。人それぞれで、映画の好みによって変わってくるが、僕はできなかった。作品を見終わったとき、心に残るものはなく、一本の映画を見ただけにすぎない。

裕福な家庭もあれば、貧しい家庭もある。またその先にも、貧しい家庭はあり、国を越えれば、一日一日生命の危機に晒されている人々もいる。自分の今いる環境に感謝をし、日々の幸せを大切にしていかなければならない。
れおん

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