韓国映画ということだけで、どこか土臭さを期待してしまっている気持ちを他所に、心から楽しめた。軽やかなテンポも散りばめられたユーモアも、わたしにはとってもエンターテインメント。
ただし、ガーデンパーティーのシーンでは笑っている友人を横目に、気付かれないようフガフガと鼻の穴をフル活用して涙を流した。どうしたって抗えない生理的な衝動を心がなぞってしまった。
ほんの一瞬。ほんの些細なこと。突然に心のネジが飛ぶ。同じ理由で、一生深く大切にしたいとネジが締まる。なみなみに溜まったコップの水が溢れたのか、不意打ちの隙間風に心が何処かへ連れ去られたのか分からない。その瞬間は、良心や善悪、俯瞰の視線なんて消え去って、わたしはわたしでしかないのだということに気付く。
キッチンに大人しくしていた桃。そろそろいい香りを放ってきたので、映画を観終わってから冷蔵庫に入れる。桃の生毛と共に自分にまだちょっぴり残されていた心の柔い部分をなぞりながら、明日はヒンヤリと冷えた桃をいただく予定。
