シネラー

罪の声のシネラーのレビュー・感想・評価

罪の声(2020年製作の映画)
4.5
実際のグリコ・森永事件をモデル
とした原作小説の映画化だが、
個人的にかなり好きな作品になった。

映画としては、
犯人を探求するサスペンスではなく、
幼い頃に犯罪に荷担させられてしまった
子どもが大人になった今、
真実に向き合っていく
社会派サスペンスだと思った。
又、同時に人を取り巻く環境や
寄り添える人がいる事の大切さを伝える
ヒューマンドラマだとも感じられた。

物語としては、
事件を追う新聞記者と
事件に荷担してしまった元少年が
真相に迫る内容となっている。
事件の証人を尋ねて巡り巡っていく
地味で情報量の多い展開が続くのだが、
テンポ良く進んで、
且つ考える余韻を与える展開に
飽きる事なく鑑賞することができた。
又、先の展開が読めているにも
関わらず、"テープの声"や
"キツネ目の男"といった
ゾクッとさせられる場面の演出には
上手さを感じた。
そして、終盤にかけての犯人に迫る
主役二人の対比等も良かった。

物語が進むにつれて、
被害者や加害者よりも傷を負って
その後の人生を歩んでいく人達が
描かれていくが、現実でも決して
無い事では無いと思った。
尚、劇中の最後には"救済"とも言うべき
展開がなされているが、
その喜びと悲しみが入り交じる
結末には涙が溢れた。

罪を犯す事がどれ程、
被害者と加害者の家族共に傷を残すかを
描いた秀作だと思った。
シネラー

シネラー